熱海殺人事件、感想
はじめに申し上げておきたいのですが、食前に食べたお寿司でおなかが痛いまま
の観劇でしたので
役者に申し訳ないような気がしたのと、
一番前でしたので
抜けるに抜けられない2時間でそれはそれは苦痛の観劇でした。その人間の観劇
の感想ですのでご容赦を。
「新」とついていたので
何が新なのか、興味がありましたが何も変わっておりません。
というよりも
復活した紀伊国屋ホールのバージョンのままです。
ですからでてくるセリフも
かなり昔となった、映画のタイトルなどが多くなっております。
いまでは「愛と青春の旅たち」とか知らない人も多そうですし「一杯のかけそば」
と言われてピンとこない人も多いでしょう。
あとは
照明の使い方、音楽ともほとんど変わらない、「いつもの熱海」がそこにありま
した。
それでいいのです。「熱海」が観たくなったら、観に行くのでそのままで変わら
ないでほしい、そんな芝居です。
しかし、改めて思ったのは
犯人大山が水野との、犯行の再現前後のシーンの良さです。素直なダサさ、
と前向きな愛情、ストレートなのです。
木村と水野の歪曲した愛情、素直になれない関係について比較の意味でも
すごく際立つものです。
素直な気持ちを素直に表現できない、そこに気持ちのすれ違いが生じる、
こんな人間関係を土台にした舞台、どのくらいの国の人がわかるのか、とも思う
し、やさしい気持ちをみんな持っているなあ、というのが実感です。
さらに一番最後、
「さらば友よ」並みにタバコにマッチを擦ってあげるシーンなんかもよかった。
あれで照れ屋なんですね、木村は。
そして最後に流れたのは、曲名はわかりませんがエルビスプレスリー。
途中流れた映画音楽は「華麗なる賭け」歌の入っている最高のバージョンです。
そんなこんなで私の、「熱海」再体験という欲求は満たされました。
しかし
演技者は、たぶん、私が観た中では一番下手かもしれない。でもそんなに下手と
いうのではなく、
今までがうますぎたのでしょう。今回もよかったから。
とにかく、「つかこうへい」の芝居という形では満足のいくものでした。
なぜか私はこの芝居はいつも前で見ている気がする。